仕事で使う文房具やコピー用紙、洗剤、飲料など、必要なものをまとめて注文できる通販サービス「アスクル」。個人向けには「LOHACO(ロハコ)」も展開しています。
今回紹介するのは、証券コード2678のアスクルです。
アスクルといえば、オフィス用品を注文するとすぐ届く便利な通販サービスとして知られています。株主優待ではLOHACOで使える割引クーポンがもらえるため、普段からネットショッピングを利用する人にとっても気になる銘柄です。
しかし、2025年10月に発生したランサムウェア攻撃によるシステム障害が、会社の業績に大きな影響を与えました。2026年5月期は大幅な営業赤字となり、2027年5月期第1四半期も赤字が続いています。
一方、会社は2027年5月期に業績のV字回復を目指しており、直近の月次売上高にも回復の兆しが見られます。
今回は、アスクルの事業内容、最新業績、今後の見通し、配当金、株主優待、投資するメリット・デメリットを初心者にもわかりやすく解説します。
1.アスクルとは?事業内容をわかりやすく解説
アスクルは、法人向け通販「ASKUL」や個人向け通販「LOHACO」を運営する企業です。
オフィス用品を中心に、日用品、食品、飲料、医療・介護用品、工具など幅広い商品を取り扱っています。
① ASKUL事業
ASKUL事業は、企業や事業所向けの通販サービスです。
コピー用紙やボールペンなどの文房具はもちろん、オフィス家具、清掃用品、飲料、医療・介護用品など、仕事に必要な幅広い商品を注文できます。
企業が必要な商品をまとめて注文できるため、買い出しにかかる時間や手間を減らせる点が特徴です。
法人向け通販は、企業が日常的に使用する消耗品などを取り扱うため、継続的な需要が期待できるビジネスです。
② LOHACO事業
LOHACOは、一般消費者向けのインターネット通販サービスです。
食品や飲料、洗剤、化粧品、日用品など、日常生活で使用する商品を購入できます。
重たい飲料やかさばる日用品を自宅まで届けてもらえるのは、ネット通販ならではの便利さです。
株主優待でもLOHACOで使える割引クーポンがもらえるため、普段から利用している人にとっては実用性のある優待といえるでしょう。
③ 物流・データ活用にも強み
通販事業では、商品を仕入れるだけでなく、注文を受け、倉庫から商品を出荷し、顧客に届けるまでの仕組みが重要です。
アスクルは物流拠点や配送網を活用し、効率的な商品供給を目指しています。また、顧客の購買データやAIなどを活用して、商品提案やマーケティングの改善にも取り組んでいます。
通販は商品を販売すれば終わりではありません。必要な商品を、必要なときに、効率よく届けられるかが競争力を左右します。
2.2026年5月期の業績は大幅赤字に
まずは、2026年5月期の業績を確認しましょう。
| 項目 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 約4,811億円 | 約4,002億円 |
| 営業利益 | 約140億円 | 約174億円の赤字 |
| 経常利益 | 約138億円 | 約191億円の赤字 |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 約91億円 | 約222億円の赤字 |
2026年5月期は、売上高が前年から約16.8%減少しました。営業利益も前年の約140億円の黒字から約174億円の赤字へ転落しています。
その主な要因となったのが、2025年10月に発生したランサムウェア攻撃によるシステム障害です。
システム障害によって受注や出荷などに大きな影響が出たため、通販事業の売上高が減少しました。さらに、物流効率の低下や顧客の回復に向けた販促費用、システム障害への対応費用なども業績を圧迫しました。
売上高が減っただけでなく、物流やシステムの復旧にも費用がかかったため、利益への影響は非常に大きなものとなりました。
サイバー攻撃の影響はどれほど大きかったのか?
アスクルは、法人向け通販と個人向け通販の両方を展開しています。注文や出荷を支えるシステムが停止すると、商品を販売したくても、通常どおり注文を受け付けたり届けたりすることが難しくなります。
今回の障害は、通販事業にとってシステムがどれほど重要かを改めて示す出来事となりました。
2026年5月期の最終損益は約222億円の赤字です。通常の販売競争だけで発生した赤字ではなく、システム障害という大きな特殊要因が影響した点は押さえておきたいところです。
ただし、特殊要因があったからといって、今後必ず元の利益水準に戻るとは限りません。顧客の回復状況や販促費用、物流効率、システムの安全性などを確認していく必要があります。
3.2027年5月期第1四半期の業績は?
続いて、2026年9月15日に発表された2027年5月期第1四半期の業績を確認します。
| 項目 | 2026年5月期第1四半期 | 2027年5月期第1四半期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 約1,223億円 | 約1,123億円 |
| 営業利益 | 約10.5億円 | 約4.2億円の赤字 |
| 経常利益 | 約9.4億円 | 約4.5億円の赤字 |
| 親会社株主に帰属する四半期純利益 | 約3.4億円 | 約5.1億円の赤字 |
第1四半期は、売上高が前年同期比8.2%減少し、営業利益・経常利益・最終利益も赤字となりました。
システム障害からの回復を進めているものの、売上高はまだ前年同期の水準に届いていません。また、顧客の回復を促すための価格施策なども、利益に影響しています。
ただし、前年同期との比較には注意が必要です。前年の比較対象期間にもランサムウェア攻撃の影響が含まれており、通常の事業環境における前年同期比とは異なります。
単純な前年比だけで回復の良し悪しを判断せず、月次売上高や購入顧客数、客単価なども合わせて確認することが大切です。
4.直近の月次業績は回復している?
2026年10月28日に発表された2027年5月期10月度の月次業績では、単体売上高は前年同月比96.6%となりました。
| 項目 | 2026年10月度 |
|---|---|
| 単体売上高 | 約286.1億円 |
| 単体売上高の前年同月比 | 96.6% |
| ASKUL事業の前年同月比 | 96.1% |
| LOHACO事業の前年同月比 | 102.7% |
| ASKUL事業の購入顧客数 | 前年同月比95.3% |
| ASKUL事業の購入顧客単価 | 前年同月比100.8% |
LOHACO事業は前年同月比102.7%となり、前年の売上高を上回りました。一方、主力のASKUL事業は96.1%で、まだ前年同月の水準に届いていません。
ASKUL事業では購入顧客数が前年同月比95.3%、購入顧客単価が100.8%でした。客単価は前年を上回っていますが、購入顧客数の回復が課題となっています。
前年同月比96.6%をどう見るべき?
一見すると、売上高は前年の約97%まで戻っており、回復が進んでいるように見えます。
しかし、前年の比較対象期間にはランサムウェア攻撃の影響が含まれています。さらに、2026年10月度は前年より稼働日数が1日少ないという事情もあります。
そのため、前年同月比96.6%という数字だけで、売上高がほぼ完全に回復したと判断するのは早いでしょう。
今後は、主力のASKUL事業で顧客数が回復するか、LOHACOの成長が続くか、そして売上高の回復が利益の改善につながるかを確認したいところです。
5.2027年5月期の業績見通し
アスクルは、2027年5月期に業績の回復を目指しています。
| 項目 | 2026年5月期実績 | 2027年5月期会社予想 |
|---|---|---|
| 売上高 | 約4,002億円 | 4,900億円 |
| 営業利益 | 約174億円の赤字 | 70億円 |
| 経常利益 | 約191億円の赤字 | 63億円 |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 約222億円の赤字 | 40億円 |
会社計画では、売上高は前年比約22.4%増の4,900億円となる見通しです。営業利益・経常利益・最終利益も黒字転換を目指しています。
前年の大幅赤字から黒字へ戻る計画となっており、達成できれば業績は大きく改善することになります。
業績回復のカギは3つ
- ① ASKUL事業の購入顧客数を回復させること
- ② 物流効率を改善し、売上高の回復を利益につなげること
- ③ システムの安全性を高め、安定したサービスを継続すること
売上高が戻っても、顧客を呼び戻すための値引きや広告費が増えすぎると、利益が思うように伸びない可能性があります。
アスクルにとっては、売上高を回復させるだけでなく、利益を確保できる販売体制を取り戻すことが重要です。
会社計画はあくまで予想であり、必ず達成できるとは限りません。第2四半期以降の決算で、利益の回復がどこまで進んでいるかを確認したいところです。
6.配当金は?2027年5月期は年間20円を予想
配当金についても確認しておきましょう。
| 決算期 | 年間配当金 |
|---|---|
| 2024年5月期 | 36円 |
| 2025年5月期 | 38円 |
| 2026年5月期 | 10円 |
| 2027年5月期予想 | 20円 |
2026年5月期は業績悪化の影響を受け、年間配当金は10円となりました。
2027年5月期は年間20円を予想しており、前期からの増配を計画しています。内訳は中間配当10円、期末配当10円の予定です。
ただし、配当予想は今後の業績や会社の判断によって変更される可能性があります。業績回復が計画どおりに進むかどうかも確認しておきたいところです。
100株保有した場合の配当金
年間配当20円が実現した場合、100株保有すると税引前で年間2,000円の配当金を受け取れる計算です。
ただし、配当金だけを目的にする場合は、購入価格に対する配当利回りも確認しましょう。株価が高ければ、配当金が増えても利回りはそれほど高くならない場合があります。
7.株主優待はLOHACO割引クーポン!
アスクルの株主優待は、個人向け通販サイト「LOHACO」で利用できる割引クーポンです。
100株以上を保有する株主を対象に、2,000円分の割引クーポンが年2回進呈されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 優待内容 | LOHACO割引クーポン2,000円分 |
| クーポン内訳 | 500円分×4枚 |
| 対象株数 | 100株以上 |
| 進呈回数 | 年2回 |
| 基準日 | 毎年5月20日・11月20日 |
| 年間合計 | 4,000円分 |
年2回、合計4,000円分のクーポンがもらえるため、LOHACOを普段から利用している人にとっては使い勝手のよい優待です。
洗剤や飲料、食品、日用品などを購入する予定がある人なら、家計の節約にもつながります。
株主優待の注意点
- 100株以上の保有が必要
- クーポンの獲得・利用にはインターネット環境が必要
- 500円分のクーポン4枚をまとめて受け取る仕組みで、4枚を別々に取得することはできない
- 利用条件や有効期限を確認する必要がある
- クーポンの価値を活かすには、LOHACOで購入したい商品があることが重要
なお、2026年5月20日基準で進呈されたLOHACO割引クーポンの有効期間は、2026年11月16日午後6時までと案内されています。すでに保有している人は、期限切れに注意しましょう。
株主優待は魅力的ですが、クーポンを使うために必要のない商品を購入してしまうと、節約効果が薄れてしまいます。普段の買い物に活用できるかを考えて判断したいところです。
8.アスクルの良い点5つ
- ① 法人向け通販「ASKUL」と個人向け通販「LOHACO」の2つの事業を展開している
- ② 文房具や日用品など、継続的な需要が期待できる商品を幅広く取り扱っている
- ③ 2027年5月期は売上高4,900億円、営業利益70億円への回復を計画している
- ④ 2027年5月期の年間配当は20円を予想しており、前期からの増配を計画している
- ⑤ 100株以上の保有でLOHACO割引クーポンが年2回、年間合計4,000円分もらえる
9.アスクルの悪い点・注意点5つ
- ① 2026年5月期はサイバー攻撃の影響で約174億円の営業赤字となった
- ② 2027年5月期第1四半期も営業赤字が続いており、業績回復は道半ば
- ③ 通期の黒字転換計画を達成できるか、今後の決算を確認する必要がある
- ④ システム障害やサイバー攻撃が再発した場合、事業に大きな影響が出る可能性がある
- ⑤ 配当や株主優待の魅力だけで購入すると、株価下落による損失が優待価値を上回る可能性がある
10.アスクルは投資すべき?
アスクルは、法人向け通販と個人向け通販を展開し、日用品やオフィス用品などの継続的な需要を取り込む企業です。
株主優待ではLOHACO割引クーポンが年2回もらえるため、普段からLOHACOを利用している人にとっては魅力があります。2027年5月期は年間配当20円を予想しており、配当金も前期からの増加を計画しています。
しかし、投資判断で最も重要なのは、やはり業績回復が実現するかどうかです。
2026年5月期はランサムウェア攻撃の影響で大幅な赤字となり、2027年5月期第1四半期も赤字でした。直近の月次売上高には回復の兆しが見られるものの、主力のASKUL事業では購入顧客数が前年を下回っています。
会社は2027年5月期に黒字転換を目指していますが、売上高の回復だけでなく、物流効率や販促費用を改善し、利益を確保できるかが重要です。
私なら、優待や配当だけを理由に急いで購入するのではなく、今後の決算で営業利益が回復しているかを確認したいと考えます。
特に、購入顧客数の回復、売上高の推移、利益率、システムの安全対策などを継続的に確認したいところです。
サイバー攻撃による影響が一巡し、業績が計画どおりに回復すれば、評価が見直される可能性はあります。一方、回復が遅れれば、株価や配当方針に影響する可能性もあります。
アスクルは、優待の使いやすさだけでなく、業績回復の進み具合を見極めながら投資を検討したい銘柄です。
11.まとめ:アスクルは業績回復が最大の注目ポイント
アスクルは、法人向け通販「ASKUL」と個人向け通販「LOHACO」を展開する企業です。
2026年5月期はランサムウェア攻撃によるシステム障害の影響で大幅な赤字となりました。2027年5月期第1四半期も赤字でしたが、直近の月次売上高では回復の兆しも見られます。
会社は2027年5月期に売上高4,900億円、営業利益70億円、最終利益40億円を目指しています。今後、顧客数の回復や物流効率の改善が進めば、業績の立て直しが期待できます。
配当は年間20円を予想しており、株主優待ではLOHACO割引クーポンが年間4,000円分もらえます。普段からLOHACOを利用している人にとっては、実用性のある銘柄といえるでしょう。
ただし、通期の黒字転換はまだ実現したわけではありません。売上高の回復が利益につながるか、そして安定したサービス提供を続けられるかが今後の課題です。
アスクルの復活を期待するなら、株価の値動きだけでなく、月次業績や四半期決算を継続して確認することが大切です。
株主優待のクーポンで日用品をお得に購入しつつ、企業の業績回復も期待する。そんな投資スタイルが合うかどうか、じっくり検討していきたいですね。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の株式の購入を推奨するものではありません。業績予想、配当、株主優待の内容は変更される可能性があります。投資判断にあたっては、最新の公式IR資料をご確認ください。


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